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3.仕事の正しい選び方

小川忠洋

「満たされる仕事」の条件

人は仕事に何を求めるか?

では、どういう基準で仕事を選んでいけばいいんだろう?そんな簡単に答えが見つかれば苦労はしない。が、かといって、ヒントがまったくないわけでもない。 人はどんな状況で仕事に不満を持つのか?どんな状況で充実感を感じるのか?そういうことを考えていけば、重要な指標はいくつか見つかる。まず、もっともわかりやすいもの―会社を辞める理由って何だろうか?リクナビの調査によれば 1位:上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった(24%) 2位:労働時間・環境が不満だった(14%) 3位:同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった(13%) 4位:給与が低かった(12%) 5位:仕事内容が面白くなかった(9%) ということらしい。面白いことに、労働環境や給与などの条件よりも、1位と3位に見られるように、人間関係の比率が高い。経営者視点で見れば、「給与が低いから人が辞めてしまう」と考えがちだが、実際は給与はトップ3にも入ってない。 でもじつは、これって心理学的には納得できる結果なんだ。そのワケを話そう。

心理学で自分の望みを知る

人間の欲求というのは複雑だ。でも、それをシンプルにまとめた研究がある。ぼくらはなぜ何かを欲しがるのか?何かをやりたがるのか?人間はどんな欲求を持っているのか?そういうことを研究した結果で、ERG理論ってのがある。 下から、ExistenceNeeds/RelationNeeds/GrowthNeeds。簡単に言うと、一番下が生きていくために必要な基本的欲求。 それが満たされたら、人間関係などに代表される社会的欲求が生ずる。そして次がより成長したいという成長欲求。この3つで考えるとシンプルでわかりやすい。複雑な理論は他にもあるので、興味があれば調べてみるといいかもしれない。 給与が低い、労働環境がどうこうというのは、いわゆる「基本的な生存欲求」だ。たいていの人はここばかり見て選んでしまう。前に言った「安定性」というのも、基本的にはここの部分(生きていくためのものだから)。 しかし大切なのは、人間はそれだけじゃ欲求を満たせなくて、不満になるということだ。「社会的な関係性の欲求」―つまり、職場の人間関係を良好に保ちたい。職場だけじゃなく、仕事で関わる人は全部だけど、まぁ、たいていは職場でしょう。 職場でもっとも時間を共にするのは上司や先輩、同僚だから、その人たちと良い関係が築けるかってのは、めちゃめちゃ重要なわけだ。働いている人が好きになれるか、上司が尊敬できるか、とかね。 例えばバイトなんかは、条件は悪いし給与も安いけど、バイト仲間って楽しいでしょ?だから続けたいって思うし、不満もそんなに持たないだろう。さらには「成長欲求」。これはつまり、自分をもっと成長させたいってこと。 成長の逆は停滞だから、例えばあなたがずっと同じ仕事ばかりしてて、仕事に慣れてしまって、難しい仕事にチャレンジすることができなくなると(あるいはさせてもらえないと)、先ほど挙げた「会社を辞める理由」の第5位、「仕事がつまらない」ってことになる。

チャレンジがなければ仕事はつまらない

冒頭に話したぼくのケースを覚えているかな?新しいチャレンジがなくなったとき、どれだけお金が儲かってもつまらないと感じるようになったという話をした。「仕事がつまらない」ってのを分解すると、「成長を感じられない」「自分の能力を試す機会がない」「チャレンジがない」ってことなんだ。つまり、その仕事で、
  1. 基本的、生存欲求が満たせるか?(ブラック企業とか給与が安すすぎとかは、もちろんダメね)
  2. 社会的、関係欲求が満たせるか?(上司や働いている人が好きになれるか、ウマが合うか)
  3. 成長欲求が満たせるか?(自分が成長できるか、何かを身につけられるか、チャレンジできるか)
という3つの観点を考えるだけでも、ずいぶん違う見方ができるんじゃないだろうか。 日本は世界でもっとも豊かな社会なので、「基本的な生存欲求」が満たされないというケースは、まぁ少ない。ブラック企業とか衰退産業でない限り、普通の生活レベルは約束されるだろう。 だから、そういった基本的なことが嫌で辞める人は、先ほどのランキングでもそんなに多くない。実際、ぼくの経験からも、会社を辞める人のほとんどの理由は「社会的欲求」―つまりは人間関係や、「成長欲求」―この会社にいてもダメだ......、というのがほとんどだ。 余談だけど、ポジティブサイコロジー(精神的病いを治す目的の心理学ではなく、幸福になるための心理学)では、人間が幸福を感じるには4つのポイントがあると言われる。
  1. コントロールの実感
  2. 成長の実感
  3. 良好な人間関係
  4. 意義あるものに献身する
コントロールは、まさに自分の人生を自分がコントロールしているということで、これは先ほども話した通り、まずは他人や会社に依存する考えをやめて、責任を持って自立することで達成できる。責任を負って自分の実力で自立することで、自由やコントロールが効くようになる。

だから、言われたことしかできない仕事。マニュアルなどで決まったことしかできない仕事は、満足感が低い。束縛のきつい彼氏彼女がうっとうしいのと似ている…

成長の実感や良好な人間関係は、ERGの内容とほぼ一緒(恋愛も人間関係のひとつなので、恋愛中はとても幸福になるね)。意義あるものに献身するというのも、ERGでは成長欲求と考えることができる。

待遇よりも重視すべきもの

どんなに給料が高くても、5歳児向けのジグソーパズルを一生やれと言われたら、魂が死んでしまう。ぼくも娘と一緒に時々やるが、1分以内に終わる。そしてしばらくすると5歳児ですら飽きてくる。何のやりがいも、挑戦も、ストレスも、トラブルもない。簡単すぎるのだ。そんなところで成長は感じられない。 仕事も同じだ。条件だけで決めていたら、あなたのなかにある「人間らしさ」としての欲求を忘れていることになる。給与や年収、待遇などの条件は、あくまであなたの基本的欲求の一つであって、それだけを見ていると後悔することになる。 なぜなら、人間、基本的欲求がどれだけ満たされても、たいした充足感は感じないからだ。むしろ、社会的欲求(社会で評価されたい、いい人間関係を保ちたい)や、成長欲求(自分を成長させたい、意義を見出したい)のほうが、人生に充足感をもたらしてくれる。 だからこそ、年収が低くても幸せな人、充実した人生を生きている人はいくらでもいる。これはどんな人間でも持っている欲求だ。条件だけに捉われず、これらのことを頭に入れて仕事を選んでいかないといけない。

「自分」を投資するべき 会社とは?

経済的な側面からの判断基準

前項では、あなたの内面的な側面からいかに仕事を選ぶかという話をした。次は、経済的な側面からどういう企業を選ぶといいかという話をしよう。 結論から言えば、次の2つの条件を満たす企業を探すとよい。その条件とは、
  1. 成長率の高いニッチ市場に参入していること
  2. その市場でリーダーであること
これは、ひと昔前に戦略コンサルティング会社のBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)が開発したプロダクト・ポートフォリオ、成長・市場シェアマトリックスというツールによるものだ。 このツールは、昔、大企業がいろんな分野に多角化していったときに、にっちもさっちも行かなくなり、「どれに注力して、どれから撤退するか?」という判断をしやすくしたツールだ。もしかしたら、あなたも聞いたことがあるかもしれない。こういうマトリックスだ。 縦軸が市場の成長率で、横軸が自社のポジションになる。このなかで、市場の成長率も高く、自社のポジションも優位なものは「スター」と呼ばれ、これは「将来化けるから、ここに積極的に投資しよう」という話だ。 成長率は高くないが、自社のポジションが優位なものは、「CashCow」―つまり「金のなる木」と呼ばれる。 成長率が低くて、自社のポジションも低いものは、もうどうしようもない「負け犬」案件。 成長率は高いが、自社のポジションが低いというものは、何らかの施策で自社のポジションを上げればスターになれるという意味で、「QuestionMark」(「問題児」)と呼ばれる。 これは一般的には、商品や事業に対して、「どの商品にお金をかけるべきか?」「どの事業にエネルギーを注ぐべきか?」ということを判断するときに使われるものだが、これをあなたの会社選びに使えば、非常に効果的である。

プロダクト・ライフサイクル

市場の成長率ってのは、要するにその業界自体が伸びているかどうかって話なんだけど、あんまり意味がわからないと思う。 単純に言うと、「市場が伸びている」というのは、毎年毎年、人々の間に広まっていって、使う人が増えていくというようなケースを言う。例えば、ちょっと前のスマホなんかは、新しいiPhoneが出るたびにどんどん普及率が増えていった。 しかし、今ではほとんどの人がスマホを持っているので、新しいスマホが出ても、今のが使えるから買う必要がない。そうなると市場の成長はどんどん下がってくる。 一般的に、どんな商品もこのようなカーブを描いて、市場に浸透していくと言われている。これはプロダクト・ライフサイクルといって、言葉の通り、商品のライフサイクルを表している。 例えば、エアコンが最初に発明されたころは、商品の価格も高く、品質も悪く、消費者も「扇風機で十分」と考えているので、なかなか売れない。しかし、しばらくすると改良、改良の結果、価格が安くなって性能も良くなる。同時に消費者にも「エアコンってすごいわ」という認知が広がる。 そして一気に売れるようになる。ここが成長期。作っても作っても間に合わないようなペースでお客さんが殺到する。しばらくすると、8割くらいの家庭にエアコンが装備される。となると、別に新しいエアコンを買う必要がないので、売れ方がゆっくりになる。これが成熟期だ。 最終段階では、エアコンなんて標準装備だし、新しい機能が出たとしても、すでに改善しまくった後なので、技術革新の余地もなくなり、まったく売れなくなる。それが衰退期。企業としては、衰退期に入る前に新しいニッチ市場を見つけて、次のライフサイクルを描く、ということをやり続ける。 この話、「エアコン」を他の商品に入れ替えてもらえば、ほとんどすべての商品に適応できることがわかるだろう。ノートパソコン、スマホやタブレットも、同じような流れに乗ってきた。 余談だが、基本的に誰もが知っているような商品・企業ってのは、誰もが知っているわけだから、「成熟期」に入っている可能性が高い。導入期の商品や企業なんて、フツーの人は知らない。自分たちの親が知っているようなら、その商品や企業は「成熟期に入ってるのかな?」と思っても間違いないだろう。 LINEも、お母さんとかまでやり出したら、これ以上ユーザー数は増えないだろう。学生の就職で人気の企業というのも、たいてい誰もが知ってる会社なので、「成熟期」に入った業界が多いんじゃないか?

市場の成長率が就職に重要なワケ

「んで、市場の成長率が自分の仕事選びと何かカンケーあるの?」と思ってるかもしれない。答えは簡単。大ありだ。大ありどころか、それに振り回されることになるくらい。成長企業と成熟企業というのは、似ているようでも中身は全っっっ然、 違う。ぶっちゃけた話、どんなカリスマ経営者が経営していたとしても、市場の圧力にはかなわない。市場が成長してないんだったら、そこで自社だけを成長させるのは、死ぬほど難しい。 一方で、市場が成長しているなら、そこに参加してるプレイヤーはみんな成長しているわけだから、自分のところが成長するのも難しくない。というか、成長するのが普通。むしろ、成長しないと遅れをとってることになる。 じゃあ、成熟市場と成長市場で、あなたの仕事がどう変わるかをイメージしてもらおう。例えば、テレビって売るのは簡単だと思うだろうか?当然、簡単じゃない。だって、もうみんな持ってるし......。 すでに持っているテレビが高性能なので、不満は特にない。そこに「新しいテレビ30万円です」って、誰が買うのって話じゃない?でも、昔は簡単に売れたわけだ。みんなテレビを持っていなかったし、持ってたとしても小さくて映りが悪いヤツだった。それが数年すると、画面はデカくなる、映像は綺麗になる、さらには番組が録画できると、コーフンするような機能が満載される。そんなのを友達の家で見た日にゃ、自分のところでも欲しくなる。 だから、黙って家電量販店に突っ立っていても、向こうから買いに来る人がわんさかいた。相手はもう「買いたい」モードだから、ちょっと接客するだけで売れる。途上国や新興国なら、このような状態のところが今でもあるから、余裕で売れるわけ。 でも現実の今の日本の市場は、誰もが高性能テレビを持っている。まぁ、映像はどんどん美しくなってはいるけれど、もはや人間の目には判別不能なレベル。こんな状況で、どうやって新しいテレビを売るんだろうか? どんなに説明が上手くても、成熟した日本の市場では売れないだろう。その結果、テレビの価格はどんどん下がることになる。昔は1インチ1万円が相場だったから、40インチのテレビは40万円した。しかし、現在は42インチのフルハイビジョンが4万円台で買える。10分の1だ。 ってことは、昔と同じだけ稼ぐには10倍売らなきゃいけない。ただでさえ売りにくいのに、10倍売らなきゃいけないとは......。 大切なのは、これにあなた個人の能力、努力が関係あるのか?ということ。ないでしょ。でも、会社からは売れって言われるから、一生懸命頑張るよね。でも無理なもんは無理。業績も上がらないし、怒られることばっかり。

上司は成長期に簡単にバンバン売れたときのことを覚えているから「今時の若いもんは。もっと働いて、契約をとってこい。わしらの若い時は......」とか言って怒られたりする(実話)。

イメージ的には、上りのエスカレーターを登るか、下りのエスカレーターを登るか、それくらいの違いがある。実際には、それ以上の違いがある。

「成長」がない組織は不健全

さらには、成長してないってことは、良い成績を上げてもなかなか昇進できないってことになる。理由は簡単だ。そのポジションにすでに人がいるから。 上の人がいて、席が埋まっているから、その人がその席を去るまで、なかなかそこにはたどり着けない。 例えば7人のチームがあって、そこにリーダーが1人いるとしよう。彼がチームを動かしている。あなたが次のリーダーになるには、会社が成長して、そのリーダーがもっと上の職種、あるいは他の職種に行くか、そのリーダーがとんでもない大失態を犯して降格されるか、どちらかに1つしかない。 成長してない会社では、そういった理由から、社内政治や派閥争いが起きる土壌にもなる(ドラマ半沢直樹のリアル版)。だって、誰かを突き落とさないと、自分の番が回ってこないんだから。誰かの失敗が誰かのメリットになってしまう。成熟していれば、それなりに収益は上がるから危機感もない。なので、社外のお客さんのことよりも、社内で席を奪い合うという不毛なことにエネルギーが使われる土壌になるのだ。 一方で、成長していると、新しい席がどんどんできてくるので、若くてもどんどん昇進でき、重要な仕事を任されたりする。社内の誰かから席を奪う必要なんてないので、社内政治や駆け引きが生まれるような土壌が育たない。社内に目を向けるより外に向かって、「もっともっと事業を広げるぞ」と躍起になってるので、ある意味、健康的。 お金の使い方にしても、売上が成長しないなら、どうしても経費削減に目が行きがちになるが、売上が成長するなら、投資に目が行くようになる。つまり、成長している市場、会社では、能力さえあれば自然と上にいって、もっと大きな仕事ができる可能性が高いということだ。 組織というのは、会社でも、生き物・植物でも、成長しないと不健康になるもの。あなたの体も新陳代謝が起きないと、老け込んでくる。新しい若い細胞が、古い細胞を置き換えていかないと、体がダメになるんだ。 ぶっちゃけた話が、スター企業に入れば、あなたの人生はまったくもって良いものとなる。
  • ◆楽しい、エキサイティング:やっぱ、成長している会社で働くのは楽しい。毎年、違うことにチャレンジしなきゃいけないし、元気のある細胞(人)が多い。
  • ◆成長やチャレンジがある:常にめまぐるしい変化があり、自分の能力以上のことをやらなきゃならなかったりするので、経験が広く深くなり、個人的に大きく成長することができる。
  • ◆昇進が早くて簡単、給料はすぐに上がり、重要人物になる:成長企業は基本的に常に人が足りない。社員よりも埋めなくてはならないポジションのほうが多いので、簡単に昇進して良いポジションにつける。
ここまで書くと、びっくりするくらい差があるように思えるが、いや、これが嘘みたいで本当の話。理屈で考えればわかるでしょ?会社や業界が成長していないのに、そこに新卒の新しい人がどんどん入ってきたら、そのなかでどんなことになるかは......。

投資家は「お金」、あなたは「時間」を投資する

もう1つ、考え方を変えて成長率を捉えてみよう。あなたが投資家になって、自分の資産を投資するつもりで会社を選ぶとどうなるだろうか? (実際そうなんだが)本当の投資家は「お金」を会社に投資して、その会社が成長するのを待つ。  同様に、あなたも会社に大切な資産を投資することになる。それは「時間」だ。実際、それは投資家がお金を投資するよりも、より深い投資になることは言うまでもない。 そうすると、投資家が重視する視点ってなんだろうか?安定性だろうか?もちろんそれも考えるだろう。世間体?それはほとんど考えないが、「ブランド」という価値として考える面はあるかもしれない。 しかし、それより何より圧倒的に考えるのは、利益率や成長率だ。利益率に関して言えば、もちろん利益を出せない事業に投資なんてできない。  ところが、最近のネット関連の投資に関して言えば、今現在、利益がほとんど出ていなくても、「将来大化けする」というだけで、多くの投資家が投資をしている。 それが「成長するかどうか」―つまり成長率である。成長率はそれくらい大切なわけだ。

幾何級数的な差が発生

簡単な算数をしてみてもわかる。 例えば年率3%成長くらいの低成長業種だと、今の規模がどれだけ大きくても、10年後には34%の成長、20年後に81%成長。30年後に243%成長。ここで規模が2倍を超える。40年後にようやく3.26倍だ。 これが年率10%成長する成長業界だったら、10年後にはすでに規模が2.6倍。20年後は6.7倍。30年後は17.4倍。40年後は45倍。 さらに年率20%の成長産業なら、10年後の規模は6.2倍。20年後は38倍。30年後は237倍。40年後は1470倍。 とてつもなく話を単純化すると、20年後あなたが40歳を超え、結婚して家族も子どもも持った時に、3%成長のところだと給料が今の1.8倍にしかならない。初任給が20万円だとすると、36万円ってとこか。  一方で、これが10%成長のところだと6.7倍だから、同じく初任給が20万円だとすると134万円にもなる(笑)。 これは3%と10%というわずかな違いでも、とてつもなく大きな差になるということをシミュレーションするために出した数字だから、実際はこうはならない。 が、なんとなく、「とんでもない差」になるってことだけはわかってもらえたんじゃないだろうか?  今現在のことしか見なければ、3%も10%も大した差ではない。しかし、それがあなたのキャリアの中で、毎年積み重なっていくと、とんでもない数字になる。だからこそ、成長率はとても大切な要素なのだ。 成長率によって将来、驚くほど差が出る まぁ、40年間も成長が続くってのは無理があるし、皮算用の異常な数値であることは間違いないけど、これを見れば、現在どうかよりも成長率が重要だというのはなんとなくわかるんじゃないかな。自分のお金を投資するとしたら、どこがいいだろう?そして、お金以上に大切な自分の時間、人生を投資するならどこがいいだろう?

あなたの人生が充実する仕事

偉大な業績を上げるために必要なこと

最後にもう一つ、別のフレームワークを紹介しよう。これは、同じ仕事をしても、偉大な業績を上げた企業と平凡な業績しか出せない企業の違いを調査した結果で、「ハリネズミの概念」と呼ばれるものだ。『ビジョナリー・カンパニー2』という書籍のなかで紹介されている。  簡単に言うと、同じ仕事をしても、偉大な業績を上げ続けた会社は、この3つの円が重なる事業をやっていたということ。 これは「会社が何をやるべきか?」を考えるときに使うフレームワークだが、会社ってのは人間の集まりなので、もちろん「個人が何をやるべきか?」という判断にも同じように使える。 個人に翻訳するとこうなるだろう。
  1. 情熱を持てる仕事⇒好きな仕事、意義を感じる仕事
  2. 儲かる仕事⇒収入の高い仕事
  3. 世界一になれる分野⇒自分の強みが活かせる仕事
まぁ収入が高いってのは、さっき話した人間の基本的な欲求だから、ここで改めて言わなくてもいい。市場価値のところでも話したが、基本的には需要と供給の関係で価格は決まる。そして、「希少性」が高いほど価値は高くなる。 会社で見ると、大きな需要がある市場で、希少性の高い商品・サービスを提供している会社は、一般的に高価格で商品・サービスを売れるので、平均年収も高くなる。 例えば、テレビ局なんかは学生に人気で、平均年収も高い業界だが、その理由はテレビ局が電波法によって電波を割り当てられていて、新規のテレビ局がほぼなく、寡占状態になっているからだ。つまりは希少だから。法律が改正されて希少性がなくなれば、がくんと下がるだろう。 あるいは、ネットに食われて、需要そのものが下がってきているので、こちらの影響も受ける。 各業界でそういうことを考えてみると面白いかもしれない。しかし、大切なのはそこではない。むしろそちらばっかり見て、キャリアを台無しにしちゃう人も多いので、「儲かる」という話は置いておきたい。そういう意味で言うと、 1好きで 2強みが活かせて 3意義を感じる仕事というのが考えるべきことじゃないかと思う。

ポジティブ心理学の結論

余談だけど、好きで、強みが活かせて、意義を感じる仕事ってのは、ポジティブ心理学でも同じような結論に至っている。つまり、Meaning(意義)、Pleasure(楽しみ)、Strength(強み)が重なるようなことにたくさん時間を使ったほうが、人はハッピーになると。 例えば、ぼくの場合。
  1. 自分の仕事は大好きで、家族がいなければ365日、延々とやっていたい
  2. ぼくの強みは、ダイレクト・マーケティングの技術と読み書きなので、できるだけそれを活かして仕事をしている。この本を作るのもその仕事の一つ。
  3. 知識を伝える教育事業という今の事業は、現在だけでなく将来の日本のためにもとても意義ある仕事だと思う(逆に言えば、スマホゲームがいくら儲かろうが、仕事にしたいとは思わない)。 という感じ。
そんな感じで、この3つの円の重なるところを考えていこう!って言えればいいんだけど、話はそんなに簡単じゃない。なぜか?これ、ある程度、社会で経験を積んだ人は出せるけど、まだ社会経験の少ない学生にとっては、自分の強みが何か、自分が好きな仕事は何かなんてわからないからだ。 だから、最初からこの分析をするのは結構難しいと思う。だが、やってみる価値はある。社会に出てから4、5年もすれば、いろいろなことがわかってきてるはずだから、もっと明確になるだろう。自分は何に夢中になれるか?何が疲れるか?何がうまくできると言われているか?などなど。

一番大切なのは「好きかどうか?」

いろんなアングルから見てきたけど、おそらく一番大切なのが「好きかどうか?」じゃないかと思う。「好きなことをやれば成功する」なんて、甘ったれたことを言うつもりはないけど、好きなことをやれば、少なくとも幸せには一歩前進すると思う(でも、儲からない仕事だったら、あなたは幸せでも家族が苦労するかもしれない)。 ま、余談はさておき、これからあなたが仕事をする時間は人生の大半を占める。その時間を、生活していくために「嫌いなこと」に費やさなきゃならないとなると、人生は地獄になる。週末や休みを楽しみに生きることって悲しくないか?  自分自身でなく、他人からどう見られるかを元に判断をすると、そうなってしまう危険性がある。 一方で、仕事が「好き」であれば、年がら年中、好きなことをやっていて、さらに社会的にも評価されるわけだから、これほどハッピーなことはない。  前の項で、できるだけ早く自分の「強み」才能を見出して、それに1万時間注ぎ込むのが卓越した結果を出すポイントだって話をした。そして1万時間、あるいは10年間を注ぎ込むには、それが「好きじゃなきゃできないでしょ!」ってこと。 好きなら1万時間も、沈黙の10年も乗り越えられる。 ビル・ゲイツもジョブズもコンピュータ大好きだったし、プロのバイオリニストは音楽やバイオリンが子どものころから大好き。投資の神様ウォーレン・バフェットも投資が大好きだ。だからこそ、夢中になって何年も何年も人生を注ぎ込むことができた。そりゃ、当然でしょう。  どんな仕事も、時間をたくさん投資して一生懸命やっていれば、それなりになる。というより、プロレベルになる。 問題は、時間をたくさん投資できるか?一生懸命やり続けることができるか?ってこと。 それって「好きかどうか?」ってのがとっても大きいんじゃないか。ウチの仕事なんかでもそう。いろんな商品があって、それぞれに担当がつくが、その担当者がその商品をどれだけ好きかってのが、業績にものすごく大きな影響を与える。 好きだったら年がら年中、その商品やお客さんのことを考えられる。「どうすれば改善できるか?」「どうすればもっと売れるか?」とか。 今は、「どんな仕事が好きか?」「どんな仕事が面白いって感じるか?」ってのはまだわからないと思う。でも2、3年もすれば、ある程度、経験の幅も広がって分かるんじゃないか。4、5年してもわからないようだと、ちょっと出遅れてしまうだろう。
「最高の選択」を探すのではなく 「選択したことを最高」にする
最後に、完璧な仕事なんてない。自分に100%ぴったり合っているものもないだろう。  世の中にある“ありとあらゆる選択肢”のなかから、自分に一番最適なものを選びたいなんて幻想は、捨てたほうがいい。 世の中にある“ありとあらゆる選択肢”を見ていったら、それだけで人生が終わってしまう。  実際、選択肢が過剰に多いと、人はフラストレーションを感じて疲れきってしまう。そのうえ、たくさんの選択肢から選択したものに関しても後悔する確率が高い。それは調査の結果、知られていることだ(後悔したくないから選択肢を増やしたのに!)。 ぼくらは限られた時間のなかで、限られた選択肢のなかから、ベストなものを選ぶように心がければよいと思う。より多くの可能性を追うよりも、もっと早く現実的な一歩を踏み出したほうがいい。 何かの道で、できるだけ早く「沈黙の10年」を歩み出したほうがいい(モーツァルトは「本当は科学者のほうがよかったのかも」とは思わないだろう)。ということは、ある意味、あなたがいま偶然いるその場所、偶然見つけた情報、そういうものが、あなたに与えられた選択肢なのかもしれない。  大切なのは、最高の選択肢を選ぶことじゃなく、選んだ選択肢を最高にすることだ。 次のページでは、20代というのは30代や40代、50代と違い、人生の分かれ目になる極めて特殊な時期だという話をするよ。

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